小さな偶然から与えられたチャンス。
次の手は?
As for the next episode?
猿野天国とたまたま街で会い、次の約束をしてから2週間。
神鷹樹はそわそわと学校の寮で身支度をしていた。
「あれ?神鷹さん珍しいですね。
外出ですか?」
いつも冷静沈着なチームメイトが落ち着かない様子で身支度。
妙高にとっては放置せざる状況であった。
神鷹は少し頬を赤らめ、嬉しそうな笑顔を妙高に見せる。
妙高はその様子にさらに驚く。
隠密行動・暗い場所ラブの人ごみ嫌いが春の日差しの中で見せるような笑みを浮かべている。
(こ…これは明日ミサイルが降ってくるかも…。)
神鷹にかなり失礼な事を考えながら、妙高は質問を続けた。
「…で、どちらにお出かけですか?」
すると神鷹は少し俯き。
指をある形におさめた。
その指の意味する言葉は。
「あの…それって、指が間違ってるんじゃ…。」
呆然としかかっている妙高に神鷹は心外だな、という表情で首を振った。
「…ないんですね…。」
妙高はその意味を噛み締めると今度こそ呆然とした。
神鷹はふと時計を見て。
立ったまま気を失っている後輩を放置し、出かけた。
今日は、猿野天国とのデートの日である。
#############
「あ、神鷹さん!ここっすよ。」
とある静かな喫茶店。
そこのやや奥にある席で、天国は神鷹を迎えた。
「すげーっすね。時間ぴったりですよ。
さっすが軍人!」
一秒の遅れも早さもなく到着した神鷹に、天国はおかしげに笑った。
神鷹は「習慣だから」と苦笑して天国の向かいに座った。
全く声を出さない神鷹とうるさい位に話す天国の会話は、意外なほどに弾んでいた。
互いの学校のことや、手話、また互いの友人の話など、話題はつきず。
天国は神鷹の分も声を出し、神鷹の方は字をなぞったり手振りをするなどで意志を伝えていた。
天国は驚くほど神鷹の言いたい事を正確に、的確に把握した。
長い付き合いのチームメイトよりもである。
神鷹は不思議に想い、ふとそのことを聞いてみた。
(猿野は どうしてそんなにすぐオレの言っている事がわかるんだ?)
「え?」
その質問に、今度は天国のほうがきょとんとした表情をする。
天国はかりかりと頭をかきながら少し考えて言った。
「ん〜〜〜。なんとなく?」
(答えになってない)
神鷹は苦笑しつつ再び答えを求めた。
すると天国も苦笑し、言葉をもらした。
「つってもさ、マジわかんねーよ。
神鷹さんの言ってる事…ってかニュアンスがなんとなく分かる…みたいな?
それに神鷹さんみたいなヤツ一人知ってるし…。」
(え?)
天国の言葉に神鷹は自分でも気づかないうちに反応した。
「ああ、覚えてねーっすか?
うちのチームでセカンド守ってたグラサンのヤツ。」
天国の柔らかい笑みと共に出された存在に、神鷹はふと眉をひそめる。
「黙ってばっかだけど良いヤツなんすよね。
合宿の時なんかオレに飯を分けてくれた…り?」
気づくと神鷹は天国の手を握っていた。
「あの…?神鷹さん?」
天国は不思議そうな顔をした。
すると、神鷹はゆっくりと唇を動かして。
声のない言葉を放つ。
「きみ が すき」
「え?」
神鷹は嫉妬したのだ。
天国が優しい笑みで語る相手に。
今傍にいるのは自分なのに。
そう思った時。神鷹のなかにすんなりと答えが導きだされる。
そしてそれと殆ど同時に。
神鷹の唇は言葉をかたどった。
すき。
「あの…神鷹さん…好き…って、それ…。」
天国は驚いた顔で、頬を真っ赤に染めて必死で言葉をつむごうとする。
神鷹はそんな天国の頬に軽くくちづけて。
「しっ神鷹さん!?」
(さるのが すき だよ)
自分の中に急激にあふれたことば。
言葉を口にするということを、神鷹は初めてに近い気持ちで感じていた。
「…オレは…わかんねーッス…。」
天国は混乱したままで答えた。
神鷹はそんな天国を見てほくそえむ。
ほら、今君はオレの事を考えてる。
(それが嬉しい)
「あ…。」
そっか。
このひとは
ただ無心に 求めているだけ
「…返事は、今度会った時にしますよ。」
(…うん。)
天国は少し落ち着いた、でもドキドキとはねる胸を抱えて。
神鷹は熱く甘い気持ちにしびれるような胸を支えて。
次の日を迎える約束をした。
一度目は敵
二度目は他人
三度目は友人
次に会う君は なんだろう
end
「再会の その次。」の続編。神鷹×猿野デート編です。
全国猿愛連盟にて続編を希望していただきましたので調子に乗って書きました。
…司馬クンの話が出てきてからがすっごく進めづらかったですね。
武軍戦も終わり、次の2回戦…本気でアイドルを出してきましたが信也さん。
まだ登場一回目なので顔にしか注目できてませんが、魅力的なキャラが居る事を期待します!
まだまだミスフルな青沢でした。
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